2025年4月28日、スペインとポルトガル全土で発生した大規模停電は、約60億人に影響を及ぼし、交通機関、通信、医療など多岐にわたる社会インフラに深刻な混乱をもたらした。この停電は、イベリア半島の電力網の脆弱性と、再生可能エネルギーの急速な導入による課題を浮き彫りにした。
停電の発生と影響
•発生時刻:2025年4月28日12時33分(中央ヨーロッパ夏時間)
•影響範囲:スペイン全土、ポルトガル全域、フランス南部の一部地域
•影響人数:約5500万人以上が停電の影響を受けた。
スペインの鉄道運営会社Renfeは、全列車の運行が停止し、約35000人の乗客が駅や車内で立ち往生したと報告した。マドリードのバラハス国際空港も一時的に電力を失い、運航に支障をきたした。また、通信インフラも大きな影響を受け、インターネットトラフィックは通常の17%まで低下した。
原因と技術的背景
停電の直接的な原因は、スペイン南部のグラナダで発生した発電量の急激な喪失(約2.2ギガワット)であり、これがセビリアやバダホスの変電所の故障を引き起こし、電力網全体の不安定化を招いた。
また、停電前の30分間にわたり、イベリア半島と欧州大陸の電力網との間で低周波の振動(0.2Hz)が観測されており、これが送電網の不安定化に寄与した可能性がある。
再生可能エネルギーとの関連
停電当時、スペインの電力供給の約59%が太陽光発電、12%が風力発電によって賄われており、再生可能エネルギーの比率が非常に高い状態だった。一部の専門家は、再生可能エネルギーの特性である出力の不安定性が電力網の安定性に影響を与えた可能性を指摘している。
サイバー攻撃の可能性と調査状況
当初、サイバー攻撃の可能性も取り沙汰されたが、スペインの電力網運営会社レッド・エレクトリカ(REE)は、制御システムへの干渉の兆候は見られなかったと発表し、サイバー攻撃の可能性を否定した。
復旧作業と今後の課題
停電発生から約24時間後の4月29日午前7時までに、イベリア半島の電力需要の99.95%が復旧した。しかし、鉄道や通信インフラの完全な復旧にはさらに時間を要した。
この停電を受けて、スペイン政府は国家安全保障会議を招集し、電力網の安定性向上や再生可能エネルギーの導入に伴う課題への対応を検討している。また、欧州連合(EU)も、イベリア半島と他の欧州諸国との電力網の接続強化を求める声が高まっている。
この大規模停電は、再生可能エネルギーの導入拡大と電力網の安定性確保のバランスの重要性を改めて浮き彫りにした。今後、スペインを含む各国は、持続可能なエネルギー政策とインフラの強化を両立させるための取り組みが求められる。
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