オーストラリア南東部ビクトリア州のブジビム国立公園で発生した大規模な山火事の影響により、2025年3月から4月にかけて、州当局は約700〜1100匹の野生のコアラをヘリコプターから射殺する形で「安楽死」させた。この措置は、火災によって生息地が破壊され、重度のやけどや餌不足に苦しむコアラの苦痛を和らげるためとされている。
背景と理由
ブジビム国立公園では、約2200ヘクタールの森林が焼失し、コアラの主要な食料源であるユーカリの木が壊滅的な被害を受けた。多くのコアラが火傷や飢餓状態にあり、地上からの救助が困難な険しい地形や高木の上に生息していることから、当局はヘリコプターからの射殺を最も人道的かつ実行可能な方法と判断した。
批判と議論
この前例のない対応には、動物福祉団体や専門家から強い批判が寄せられている。特に、空中からの射殺が「安楽死」と呼べるのか疑問視する声や、母親を失った子コアラ(ジョーイ)の保護が不十分であるとの懸念が示されている。また、森林伐採や商業用ユーカリプランテーションの管理不足が、コアラの生息地の断片化や過密化を招き、火災時の被害を拡大させたとの指摘もある。
今後の課題
この事件は、気候変動や森林管理の不備、野生動物保護政策の課題を浮き彫りにした。専門家は、コアラの生息地の保全や連結性の確保、持続可能な森林管理の強化、そして気候変動への対策が急務であると訴えている。
このような悲劇を繰り返さないためには、政府、企業、地域社会が連携し、包括的な野生動物保護と生態系の回復に取り組む必要がある。
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